バックナンバー・ギャラリー 第三室 2
想い出の一品 その 2
「円空刻・両面宿儺像」 P 30 号 1995.10
前回は、心を込めて墨で描いた円空佛群像が評価を得たことが、墨の絵に傾注する契機になったこ
とを披露した。
円空佛=円空の鉈彫りといわれる木彫佛を描くようになったのは、偶々飛騨千光寺でのこの仏像との
出逢いが最初で、僧円空の生き様に共感して以降テーマのひとつになる。
日本書記には、皇命に従わず、人民の椋略を楽しみにしていたので天誅を下したとされている伝説の
超人である;両面宿儺も、おそらく大和政権の攻略に抗した土着の豪族であって、朝敵ではあっても、
飛騨の人々にとっては中央権力への抵抗の象徴であって馴染み深い存在であったのだろう。
一件荒々しく見える像だが、柔和さが窺えるのは、円空が民の目で伝説の超人を思い描き彫ったから
に違いない。
円空は、自分には厳しい修行を課し、貧しい民の安穏のみを願って生涯に12万体の造仏という遺業
を果たした。
私は円空のそのひたむきな生きざまに畏敬の念を以て、作品に迫り自分の心を投影して語らせたいと
言う思いと、円空仏の荒々しさと繊細さのバランスある彫法に、緻密さと大胆な省略という「墨の絵」の
描法に共通するものを感じて、円空仏にに惹かれ、筆を執っている。
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